1957年(昭和32年)
ビック・トピックス
- 上期は神武景気、下期から「なべぞこ不況」に(~1958年下期)
- ソ連が「スプートニク1号」の打ち上げに成功(人工衛星と大陸間弾道ミサイルの開発競争始まる)
- 日本の南極探検隊が「昭和基地」を設置
- ワンダラーブラウスなど対米綿製品輸出自主規制始まる
- バルキーセーター・ブーム起こる
生活・文化
- スタルヒン選手(プロ野球初の300 勝投手)が東京都内で自動車事故により死去
- 美空ひばりが国際劇場で塩酸をかけられ全治3週間の負傷
- 南極学術探検隊が観測船「宗谷」からヘリコプターでオングル島に上陸し、「昭和基地」と名付けた
- ジラード事件発生(群馬県相馬ヶ原の米軍演習場で薬莢拾いをしていた農婦を「ママさん、大丈夫」と招き寄せて射殺した事件。日本の裁判で懲役3年執行猶予4年の判決が確定したが、帰国してしまった)
- 広島県で陸上自衛隊の夜間行軍演習中に隊員2人が過労による心臓マヒで死亡(死の行軍事件)
- 「宗谷」が氷海に囲まれて立ち往生し、ソ連の砕氷船「オビ号」に救い出された
- 最高裁が『チャタレー夫人の恋人』は猥褻文書であるとの高裁の判決を確定(チャタレー裁判)
- 売春禁止法施行
- 東京・渋谷の東急文化会館に五島プラネタリウムがオープン(2001年閉館)
- 東京の明治座が漏電で失火、全焼した(翌年3月再開場)
- 定期船「第五北川丸」が広島県三原沖で暗礁に乗り上げ転覆し沈没(乗客218人のうち死者・行方不明113人。1924年建造の老朽船に定員の3倍の乗客を乗せ、船長が16歳の少年に舵取りをさせていた)
- トニー・ザイラーが初来日。スキーテクニックを披露し、スキーブームが本格化
- カッパブックスの『三光』(日中戦争時の日本軍の犯罪行為を告白した本)が右翼の脅迫で販売中止に
- 英国が太平洋クリスマス島付近で水爆実験を敢行
- 東京都の小河内ダムが貯水を開始(出現した人造湖は奥多摩湖として観光名所になった)
- テレビ受信契約数が50万突破
- 東京・谷中の五重塔が心中放火で焼失(幸田露伴『五重塔』のモデルにもなった文化財だった)
- 九州大水害(最高700mmの豪雨が襲い、河川の氾濫、崖崩れなどが発生。中心の長崎・熊本県では死者・行方不明992人、負傷者3774人。なかでも諫早市では本明川が溢れて約1万戸が水没した)
- 日本初の観測用ロケット(糸川英夫による国産ロケット「カッパー4C」)の打上げに成功
- 茨城県・東海村の日本原子力研究所で、日本で初めての「臨界」実験に成功(当時は「原子の火」ともてはやされた)
- ソ連のボリショイ・バレエ団が日本で初公演
- 日銀が 5000円札発行(札の中央に聖徳太子の肖像)
- ソ連が史上最初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功(地球を周回し、1958年1月に大気圏に突入して消滅)
- 西鉄ライオンズは稲尾投手が7月からリリーフで20連勝(日本新記録)してパ・リーグ優勝。さらに日本シリーズでも巨人に4勝1分けの優勝
- 売春汚職事件発生(赤線業者による売春予防法阻止の工作が発覚し、自民党議員3人逮捕。判決は2人有罪、1人無罪。読売新聞の誤報騒動や検察内部の派閥対立も話題になった)
- ソ連がライカ犬を乗せた人工衛星「スプートニク2号」の打ち上げに成功(衛星は回収されず、ライカ犬は睡眠薬により宇宙で死亡)
- 大相撲に福岡場所が加わり、年5場所になる
- 全日本航空設立(日本ヘリコプター輸送が改称)
- 天城山心中事件(学習院大学の同級生の男女のピストル心中自殺死体発見。のちに往復書簡集「われ御身を愛す」がベストセラーになる)
- 日銀が100円硬貨発行(表に鳳凰、裏に桜のデザイン)
- 東京・上野動物園内で「上野懸垂線」が開業(日本で初、世界で2番目のモノレール)
- 米国がICBM「アトラス」の発射実験に成功
- NHK東京がFM放送を開始
- NHK、日本テレビがカラー実験放送局開局
- 通産省が「グッドデザイン商品選定制度」(通称Gマーク制度)を創設
- 東京の人口、851万人で世界第1位に
- 流感が猛威をふるう
- 東京への憧れから家出件数が過去最高を記録
- ロカビリーブーム。新宿,銀座のジャズ喫茶がロカビリー喫茶に衣替え相次ぐ
- ゴルフ・ブーム始まる
- ドライブ・クラブが全国で 400社を超え,ドライブブームが高まる。
- サイクリングブーム。登山ブーム。北海道旅行ブーム
- ポッピング(スプリングのついた一本足の鉄製の飛び杖)がブーム
- 江崎玲於奈がエサキダイオードを発明し、日本物理学会で発表(当時はほとんど注目されなかった)
- 新製品=軽三輪自動車「ミゼット」、「プリンス・スカイライン」、「コロナ」、「フェアレディ」、サーモスタット付き電気やぐらこたつ、発熱布着脱式電気毛布、電気あんか、電気ポット、硬質ホーローの電気冷蔵フィルターつきたばこ「ホープ」発売(10本入り40円)、「ウテナ男性クリーム」、ポリバケツ
流行語
デラックス、よろめき、ストレス、ファニーフェイス、グラマー、シスターボーイ、才女時代、低音の魅力、永すぎた春、孤独の人、ケ・セラ・セラ、「神様、仏様、稲尾様」、「何と申しましょうか」、「かっくん」
ファッション
- ジョージ岡、ニューヨークのコンクールで1位に入賞
- ADセンター、ハンターライン発表
- メンズデザナーによる「ファッション十三人会」が発足
- 初の男性モデルグループ「SOS」結成
- カラー:ツートーンカラー
- エレガンス指向が目立ち始める
- サンローラン、カルダン、ニナリッチへの人気が高まる
- アセテート・タフタ開発、婦人コートに人気
- ダッフルコート流行
- シネモード続出(「太陽の季節」で太陽族、「挽歌」で挽歌スタイル、「ヘビードール」でベビードール)
- 浜村美智子の「バナナボート」でカリプソスタイル(黄色に脱色したロングヘア、濃いアイシャドー、眉墨で輪郭を描いた唇)が夏に流行
- サマーセーター登場
- バルキーセーター、第1次ブーム
- 鐘紡、樹脂加工ノーアイロン・ワイシャツ発売
- 鴨居羊子の下着ショー(大阪)でスキャンティ登場
- ウイクリーパンティ登場
- ブラジャー売上増大、下着ブーム本格化
- 衛生加工短靴下、FF式トリコット長靴下登場
- ウォッシャブル革手袋発売
- 大塚末子の機能的なきものが注目される
- IWSが「世界デザイン画コンテスト」開催
- レナウン商事が「コットンファブリック・デザインコンテスト」実施
- 長沢節スタイル画教室が「セツ・モードセミナー」に改称
- 文化服装学院が男子に門戸開放
- ディオールが春夏にリバティライン、秋冬にスピンドルライン発表。10月急逝、後継者にサンローラン
Fジャーナリズム 「服装」創刊
ファッション小売業
- 全国小売業経営者会議、米子で開催
- 日本初の本格的地下街「名古屋地下街」開業(61店)
- 数寄屋橋ショッピングセンター開店
- 渋谷地下街開業
- なんば地下センター開業
- 阪急グループの総帥、小林一三死去
- 各地にスーパーが続々誕生
- 渥美俊一がチェーンストアにマーチャンダイジングとマーチャンダイザーの必要性を説くセミナー開始
- [西武百貨店]沼津店開店。*鎌倉店開店
- [そごう]東京進出、有楽町駅前の読売会館にそごう東京店(通称:有楽町そごう)開店(宣伝キャッチフレーズは「有楽町で逢いましょう」)
- [大丸]東京店が初のパートタイマー採用(「3時間の百貨店勤め」というキャッチフレーズで募集した)
- [阪神百貨店]阪神電鉄から分離独立して、阪神百貨店を設立
- [松坂屋]「スウェーデン展」開催。*「デンマーク展」開催
- [丸物]池袋に東京丸物オープン
- [三越]池袋店開店(2009.5 閉店)
- [主婦の店]本部を東京・両国に設置。*1号店を大垣に開店(運動全国に広がる)
- [ダイエー]大栄薬品工業を設立。*ダイエー1号店の千林店開店
- [灘生協]セルフ方式を導入
- [銀座マギー]銀座に開店
- [小松ストアー]銀座本館ビル完成
- [サンヤマモト]本店を日比谷・三信ビルに移転
- 「しまむら」島村呉服店がセルフサービスを導入し、総合スーパーストアをめざす
- [大和屋シャツ店]店を京橋からから銀座7丁目に移転
アパレル産業
- ブラウスなど対米綿製品輸出自主規制始まる
- ワンダラーブラウスは工賃アップで事実上輸出不能に
- 大阪洋装品卸商連盟、第1回大装連見本市開催
- 横山町・馬喰町の現金問屋街で週休制実施
- 東京婦人子供服製造卸協同組合、週休制実施
- 第1回全国靴下まつり開催
- 東京第一マフラー・スカーフ商工協同組合結成
- 横浜ネッカチーフ新興会設立
- 日本メリヤス調整組合連合会(莫調連)、組合員の丸編機の自主登録と新増設禁止を実施。続いてアウトサイダーに丸編機の登録、新増設禁止の通産大臣命令発動
- 伊サンタゴスティーノ横編機やイタリアン・ニットに世界的な注目集まる
- バルキーブーム発生(キャラバンが火付け役になる)
- レナウン商事が5地区(札幌、仙台、名古屋、広島、福岡)に販社を設置(洋品店重視へ)
- 和江商事がワコールに改称
- 郡是製絲(グンゼの前身)が亀岡工場新設、刺繍レース事業開始
繊維・テキスタイル産業
- 三品綿糸30番手単糸、全限200円大台を割る
- “ポーラー旋風”発生(2200円から1200円に急落)
- 綿紡、時間短縮実施(実働7時間45分)
- レーヨンF暴落、取引所開所以来の安値
- 化繊工業、世界的に不況
- 化繊各社、一時帰休実施(延べ2755人、1か月)
- 化繊労働時間、30分短縮(賃金は据え置き)
- レーヨンS輸出カルテル発足
- 綿紡績主導型から化合繊主導型へと産業構造に変化
- 川島織物工業が川島織物(川島織物セルコンの前身)に社名変更
- 旭化成がカシミロンのパイロットプラント完成
- 鐘淵化学がカネカロンを日産5トンで生産開始
- 帝人・東洋レが英ICI社のポリエステル繊維などの製造技術導入認可取得、即日契約締結
- 帝人・東洋レがポリエステル繊維の商標を「テトロン」に決定発表
- 東洋紡が東西メリヤス工業(のちのダイヤニット工業)設立。*四日市メリヤス(のちのトーヨーニット)設立
- 東洋レがアクリル繊維「トレロン」試験生産開始。*ポリプロピレン繊維「パイレン」試験生産開始
- 三菱レが三菱化成、米ケミストランド社との共同出資で新光アクリル繊維設立
- 台湾の人造繊維公司が初めてレーヨンF生産開始
繊維・ファッション行政
- 通産省が帝人・東洋レの英ICIからのポリエステル技術導入認可(生産開始/帝人翌年3月、東洋レ同11月)
- 輸出会議が1957年以降5ヵ年間の対米綿製品輸出調整実施計画を決定
- 通産省がレーヨンS13社に4月から3カ月間の操短勧告(63年まで続く)
- 繊維局が綿紡各社に綿紡績操業秩序維持に関して通牒
- 通産省がレーヨンS輸出カルテル結成認可(期間、2年間)
- 輸入抑制のため、輸入負担率引き上げ
- 通産省が綿糸生産抑制措置を発表(月産19万俵)
- 通産省が紡毛紡績の操短(30%)を勧告
- 通産省がレーヨンF操短を勧告(62年まで続く)
- 通産省が三菱レとケムストランド社との間に締結されたアクリル繊維技術援助契約にもとづく外資導入申請を認可
- 「中小企業安定法」を廃止し、「中小企業団体の組織に関する法律」(中団法)施行(商工組合の事業活動と設備規制等の根拠法)
- 通産省が繊維全体の総合不況対策(操短強化)を決定
- 通産省が綿混紡二次製品の輸出規制
- 通産省が絹・レーヨンの過剰織機処理方針決定
政治・経済・社会
- アイゼンハワー・ドクトリン発表(英仏勢力の後退によって生じた中東の真空地帯を米が埋めるとしもの。「中東特別教書(アイク・ドクトリン)」と呼ばれた)
- イーデン英首相がスエズ戦争の責任をとって辞任。後任首相にマクミラン
- 石橋首相が病気のため内閣総辞職
- 岸信介内閣成立(石井光次郎を副総理にしたほかは全閣僚留任)
- ロンドンで日英通商協約調印
- 日銀が公定歩合を1厘引き上げ(日歩2銭1厘になる。活発な投資需要に基づく国際収支悪化対策)
- 自民党大会が岸総裁を選出
- 西独などヨーロッパ6か国が欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(ユーラトム)創設のための「ローマ条約」に調印(発足は1958年1月1日)
- 所得税法改正,法人税法改正,租税特別措置法改正などの減税3法案成立(1000億円の減税実施)
- スエズ運河完全開通
- 西独の原子力研究者18人がゲッチンゲン宣言(西独の核武装に反対し、一切の核開発に関する研究に関与しない姿勢を示した)
- 政府が参院内閣委員会で、攻撃的核兵器保有は違憲との見解を発表
- 岸首相が「汚職、貧乏、暴力の三悪追放を方針にしたい」と発言
- 日銀が公定歩合をさらに2厘引き上げ、2銭3厘になる
- 岸首相が東南アジア6か国訪問に出発(首相による戦後初のアジア諸国訪問)
- 英国が対中国輸出規制を緩和(西欧諸国が追随)
- 岸首相が蒋介石と会談し、国府の大陸反攻に同感と言明
- 米大統領行政命令で、沖縄の米民政府長官を高等弁務官(現役軍人)とする(初代高等弁務官にムーア中将就任)
- 国防会議が第1次防衛力整備3カ年計画を決定、同日閣議了承
- 岸首相が訪米し、日米新時代強調の共同声明を発表
- 政府が中国貿易緩和リストを発表
- 立川基地拡張のため、砂川町で強制測量。2回目の強制測量のとき、反対派と3000人の機動隊が衝突、一部の学生が基地内に入る
- 日豪通商協定調印
- カナダでバグウォッシュ会議が開かれ、核兵器の脅威と科学者の社会的責任に関する声明を発表
- 岸内閣全面改造(外相に藤山愛一郎、大蔵相に一万田尚登、郵政相に田中角栄が初入閣)
- 国際原子力機関が発足
- 米国務省が在日米地上軍の撤退を発表(1958年完了)
- 憲法調査会が第1回会合(高柳賢三会長、社会党不参加)
- ソ連が大陸間弾道ミサイル(ICBM)の実験に成功(米ソ軍事バランス逆転)
- マラヤ連邦完全独立
- 米国で公民権法成立
- 文部省が教員勤務評定制度の趣旨徹底について通達
- 藤山外相、米大使と安保条約の運用は国連憲章に則るとの公文を交換
- 日本が国連に核実験停止決議案を提出
- 外務省が外交青書を初めて発表
- 日本が国連安保非常任理事国に当選。同時に軍縮委員会の構成国にもなった
- インド首相ネール来日
- 日仏貿易新協定調印
- 岸首相が東南アジア9か国訪問に出発(経済協力・賠償問題などを協議)
- 毛沢東がモスクワで「東風は西風を圧す」「アメリカ帝国主義は張り子の虎」と演説
- ムーア沖縄高等弁務官が地方自治・選挙関係法を布令により改正(首長不信任の条件緩和など)。
- 那覇市議会が市長不信任案を可決、瀬長市長罷免
- 日ソ通商条約調印(1958年5月発効)
- 政府が年率 6.5%の経済成長を目標とする新長期経済計画を決定
- 全国都道府県教育委員長協議会、勤評試案を決定
- 日教組が勤評反対闘争のため「非常事態宣言」を発表
- カイロで第1回アジア・アフリカ人民連帯会議開催(45か国参加)
- 経済白書の副題「速すぎた拡大とその反省」
- (第3景気循環はこの年6月にピーク、以後下降し、神武景気から「なべ底不況」へ)